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風邪や体調不良のあとに逆流症状が悪化するのはなぜ?胃食道逆流症と体調の関係

「風邪をひいたあとから胸焼けがひどくなった」「体調を崩してから逆流症状が悪化した」——このような声を患者さんからよく聞きます。

風邪や体調不良と胃食道逆流症(GERD)の関係は、一見すると無関係のように思えますが、実は密接に関係しています。今回は、なぜ体調を崩したあとに逆流が悪化するのか、どのようなメカニズムが関わっているのかを、消化器内科の視点から詳しく解説します。

そもそも胃食道逆流症(GERD)とは?

胃食道逆流症とは、胃酸や胃の内容物が食道へ逆流し、胸やけや呑酸(酸っぱいものがこみ上げる感じ)などの不快な症状を引き起こす病気です。主な原因は、食道と胃の境目にある「下部食道括約筋(LES)」の働きが弱くなることです。

LESは通常、胃酸が食道に逆流しないようしっかりと締まっているのですが、何らかの理由で緩むと逆流が起こりやすくなります。

体調不良のあとに逆流が悪化する5つの理由

では、なぜ風邪や体調不良のあとに逆流がひどくなるのでしょうか?以下に主な理由を5つ挙げて説明します。

1. 咳やくしゃみによる腹圧の上昇

風邪をひくと、咳やくしゃみが頻繁になります。これらは無意識のうちに腹部に大きな圧力をかけています。腹圧が高まると、胃が圧迫されて胃酸が逆流しやすくなります。

特に、もともと逆流症状がある方や、胃酸を抑える薬を服用している方では、少しの腹圧でも症状が悪化することがあります。

2. 横になる時間が増える

体調を崩すと、横になって安静にする時間が増えます。横になると重力の助けが得られなくなり、胃酸が食道に戻りやすくなります。特に食後すぐに寝てしまうと、症状が悪化しやすくなります。

3. 食欲低下による胃の働きの低下

風邪をひいたとき、多くの人が「食欲がない」「少ししか食べられない」といった状態になります。すると胃の運動も低下し、胃の内容物が長時間胃の中にとどまるようになります。

この状態では、胃の中に滞留した内容物が逆流しやすくなり、症状が長引く原因になります。また、消化の悪い食事や刺激物(脂っこいもの、カフェイン、アルコールなど)を摂ることも悪化の一因です。

4. 自律神経の乱れ

風邪や発熱、体調不良は体にとってストレスです。このストレスは、自律神経に大きな影響を与えます。自律神経は胃腸の働きやLESの開閉にも深く関与しています。

ストレスや体調の変化で自律神経が乱れると、下部食道括約筋の締まりが弱くなり、胃酸が逆流しやすくなるのです。とくに、ストレスや疲労に弱い方はこの影響を受けやすく、胃の不調が長引きやすくなります。

5. 服用薬の影響

風邪薬や咳止め薬の一部には、胃酸の分泌を促進したり、消化管の動きを鈍らせたりする成分が含まれていることがあります。

例えば、鎮咳薬や気管支拡張薬に含まれる成分の中には、下部食道括約筋の筋肉に作用して緩めてしまうものがあります。これにより、普段は症状のない方でも、薬の影響で逆流が起こることがあります。

逆流症状が悪化したときの対処法

体調を崩したあとに逆流症状が出た場合、以下のような対策を心がけましょう。

1. 食後すぐに横にならない

できれば食後2~3時間は上体を起こして過ごしましょう。昼寝をする場合も、枕を高くして少し角度をつけることで逆流を防ぎやすくなります。

2. 消化に良い食事を心がける

うどんやおかゆ、スープなどのやさしい食事を選び、脂肪分や香辛料の強いものは避けましょう。胃に負担をかけないことが大切です。

3. 水分はこまめに少量ずつ

一度に大量に水分を摂ると胃が膨らみ、逆流を招くことがあります。水分はこまめに少しずつとるようにしましょう。

4. 咳が長引く場合は早めに受診を

咳が続くことで逆流が悪化するため、咳止めや吸入薬の使用を医師と相談しながら進めましょう。

5. 胃薬を併用する

風邪薬を使用する際には、必要に応じて胃酸を抑える薬を併用すると、逆流を予防しやすくなります。

逆流症状が続く場合は専門医に相談を

風邪が治っても逆流の症状がなかなか改善しない、胸焼けや呑酸が日常的にある、という場合は、胃食道逆流症が慢性化している可能性があります。

また、症状が逆流性食道炎やバレット食道、食道がんなどにつながるケースもあるため、消化器内科を受診して内視鏡検査を受けることをおすすめします。

当院では逆流症状の診療と胃カメラ検査を行っています

当院では、逆流性食道炎や胃食道逆流症に対して、症状に応じた治療とアドバイスを行っています。鎮静剤を用いて眠ったような状態で、苦痛がなく内視鏡を受けられるよう心がけています。また、鼻からの内視鏡検査(経鼻内視鏡)も実施しており、鎮静剤を使わなくても負担の少ない検査が可能です。

風邪のあとに逆流症状が悪化した方、胸焼けや呑酸が続いてつらいという方は、お気軽にご相談ください。

ご予約やご相談は当院ホームページ、またはお電話にて承っております。

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