胃炎(慢性胃炎・萎縮性胃炎)

胃炎でお困りの方へ

胃炎でお困りの方へ胃に炎症が起こっていることを胃炎といいます。胃炎には急性胃炎と慢性胃炎があります。急性胃炎は文字通り急性の症状で発症するもので、みぞおち付近の痛みや、吐き気・嘔吐、時に吐血・下血といった症状があります。発症の経過や腹部の所見で診断することが多いです。一方、慢性胃炎はおおまかに3つの考え方で診断されています。
①症状が慢性に経過する、みぞおち付近の痛みやもたれ感、吐き気など、②内視鏡検査で胃粘膜に炎症所見を認める、③胃粘膜組織を検査し、病理組織学的に診断する、です。急性胃炎では、軽症の場合は安静にしたり胃薬を用いて治療したりしますが、症状が強い場合は内視鏡検査を行って、胃の状態や原因を確認します。慢性胃炎は、症状がなくても内視鏡検査、病理組織学的検査で診断されることがあります。その場合、ピロリ菌がいるか否かを検査することをお勧めします。
例え症状が無くても、ピロリ菌がいることで慢性胃炎となり、胃・十二指腸潰瘍、胃癌に進行する可能性があるからです。ピロリ菌を除菌することで胃癌のリスクを軽減できると考えられています。
胃炎の症状でお困りの方や、気になる症状がある方は、気軽にご相談ください。

胃炎の症状とは

胃炎の症状とは腹痛・吐き気・嘔吐・腹部の不快感・胃のむかつき・重さなどの症状が見られます。胃の不快感やむかつきなどの自覚症状から診断されるのを症候性胃炎と言います。症候性胃炎と診断するものの中には、急性・慢性胃炎のように胃粘膜に変化があるものだけでなく、内視鏡検査などで異常所見は認めないものの、みぞおちのあたりに不快症状が続く場合があります。最近ではそういった潰瘍や癌など明らかな異常がないにも関わらず、不快症状が出るものを、機能性ディスペプシアと診断することがあります。
つまり、胃腸に何かできている(器質性変化がある)わけではなく、胃腸の働き(機能性)に問題がある状態です。機能性疾患は診断が簡単につかないですが、本人にとっては辛い症状があるため、積極的に治療を行うことを勧めます。

急性胃炎

慢性胃炎(萎縮性胃炎)

※以上の症状気になる場合は、なるべく早めに当院にご相談ください。また、胃炎には無症状のケースがある為、定期的に健診を受けることをお勧めしています。

胃内視鏡検査について

急性胃炎

文字通り急激に症状が出現、日単位で症状が変化します。風邪や食中毒によって腹痛や胸やけが生じる場合、通常は4~5日以内に良くなります。特に治療を必要としないこともあれば、胃に多数の炎症や潰瘍が生じ、出血するような急性胃粘膜病変(AGML)まで様々な経過があります。

慢性胃炎

慢性胃炎は月単位、年単位で胃粘膜に炎症が続きます。内視鏡検査で見える所見や、採取した組織を顕微鏡で確認する病理組織学的検査で、胃粘膜の組織に炎症性変化を認めていても症状がないこともあります。また、炎症の範囲や程度も様々ですが、内視鏡検査をしないと判断できないことがほとんどです。
慢性胃炎によって持続的に胃粘膜に炎症が生じる結果、癌が発生しやすくなることがわかっています。したがって、慢性胃炎がないかを確認するために検査、治療を受けることは胃癌の予防という観点からとても重要です。

胃炎の原因

急性胃炎

急性胃炎は様々な原因があります。よくある原因は薬の副作用です。痛み止めが胃を荒らすと聞いたことはないでしょうか。痛み止め(非ステロイド系消炎鎮痛薬)は胃粘膜のバリア機能を下げる作用があります。そのため胃が分泌する胃酸によって胃自身がダメージを受けるのです。痛み止めを使う時に胃薬を併用するのは胃粘膜を保護するためです。その他、アルコールの過剰摂取や強い精神的・身体的ストレス、タバコの吸いすぎ、寄生虫感染(アニサキスなど)なども原因となります。

慢性胃炎

慢性胃炎の多くは、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染が関係していると考えられます。ピロリ菌がいつ、どこから胃に入って感染するかはまだはっきりとわかっていません。しかしほとんどの場合、免疫システムが未発達の段階である幼少期に感染すると考えられています。そして長期間にわたって、持続的に弱い炎症が続いていきます。疫学研究の結果、高齢者のピロリ菌感染率が高い(60-70%)のに比べ、若い人の感染率は低い(10%以下)であることがわかっており、衛生環境の整備とピロリ菌感染が関係していると思われます。
またピロリ菌感染以外では、自己免疫性胃炎も原因となります。自己免疫性胃炎は、免疫系の問題で自身の胃の組織を異物とみなして、免疫システムが反応することによって炎症が生じます。自己免疫性胃炎になる原因は不明です。ビタミンB12や鉄の吸収が上手くできなくなるため、補充療法をする必要があります。
慢性胃炎による炎症は緩やかに進行することも多く、無症状のことがよくあります。

胃癌はピロリ菌感染と関連する

胃癌はピロリ菌感染と関連する胃癌は慢性胃炎と大きく関係します。ピロリ菌感染によって胃に持続的な感染状態が起こることによって、遺伝子異常が重なり胃癌となります。これは、ウイルス性肝炎(B型、C型)と肝癌、潰瘍性大腸炎と大腸癌、逆流性食道炎と食道癌の関係と似ています。持続的な炎症は癌の原因となるのです。
ピロリ菌に感染したことがない胃の粘膜から胃癌が発生する頻度は1%以下とされています。一方、ピロリ菌が陽性の胃からは一定の割合で胃癌が発生することがわかっています。ピロリ菌の感染は幼少期に起こり、その後無症状のまま経過することが多いです。健康診断などで胃内視鏡検査を行いピロリ菌の有無を調べるのは、将来胃癌に進行するリスクがあるか否かの評価をすることが大きな目的です。胃炎の状態によって胃癌になるリスクも変わるため、胃内視鏡検査の所見でリスク評価も行います。
ピロリ菌が陽性の場合、ピロリ菌を除菌すると胃癌のリスクが下がると考えられており、無症状でも積極的にピロリ菌の除菌治療を勧めています。ただし、ピロリ菌の除菌後も胃癌のリスクが無くなるわけではないので、定期的な胃内視鏡検査を受けることが重要です。

ピロリ菌について

胃炎の検査方法

急性胃炎の場合は、まず問診で患者さんの症状を丁寧に伺います。発症する前の食べ物や飲み物、薬の服用状況、日頃の食習慣などを確認します。病状によっては、胃内視鏡検査を行います。また、慢性胃炎の場合は、胃内視鏡検査を行って胃粘膜の状態を調べます。急性胃炎や慢性胃炎、その他の炎症を適切に診断して早期に治療を行うことが重要です。当院では、内視鏡の経験豊富な専門医師が胃内視鏡検査を行っています。

胃内視鏡検査について

胃炎の治療

胃炎の治療薬物療法・ピロリ菌除菌治療・生活習慣の改善があります。

薬物療法

胃酸分泌を抑制する薬や、胃粘膜を保護する薬など、患者さんの病状に応じて的確に処方します。胃炎の症状に悩まれる方も多く、市販薬で対処する人も多いですが、同じ胃炎症状でも胃癌などの重篤な病気の可能性もある為、胃炎の症状が続く方は早めに専門の医師を受診することをお勧めします。

ピロリ菌除菌治療

ピロリ菌感染が原因の胃炎には、ピロリ菌の除菌治療を行います。抗生剤(2種類)と三分泌食製薬を組み合わせて治療します。1週間の服用によって70-80%の方は除菌がうまくいきます。1回目の治療で除菌できない場合は2回目の治療を行います。2回目までの治療で90%の人で除菌が完了します。

ピロリ菌検査と除菌治療

生活習慣の改善

急性胃炎の改善と再発予防には、栄養バランスのとれた食事・適度な運動・良質の睡眠が重要です。過度な飲酒・喫煙・刺激物の摂取・食べ過ぎ・飲みすぎは胃に負担をかけます。また精神的・肉体的な強いストレスも胃炎の原因となるので、ストレスを軽減することはとても大切です。

よくある質問

ピロリ菌の感染の有無はどのように調べますか?

ピロリ菌そのものやピロリ菌に対する免疫反応(ピロリ菌抗体産生)を調べる方法と、ピロリ菌が持つ酵素(ウレアーゼ)を検出する方法があります。検査方法は胃内視鏡を使う方法と使わない方法があります。保険適応となるのは胃内視鏡を行い、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍を確認した時です。胃内視鏡を受けずに検査する場合や胃内視鏡で適応となる所見を認めない場合は自費検査となります。

ピロリ菌除菌治療で除菌できますか?

1回目の除菌成功率はおよそ70~80%、2回目はおよそ90%とされ、ほとんどのケースで2回目までの治療で成功します。内視鏡検査で、慢性胃炎・胃潰瘍・十二指腸潰瘍が診断された場合、2回目までの除菌治療に保険適用で治療することができます。

慢性胃炎から胃癌に進行する可能性はどれぐらいですか?

胃癌の患者さんのほとんどにピロリ菌の感染既往がありますが、ピロリ菌陽性者が必ず胃癌を発症することはありません。ピロリ菌陽性者のおよそ3%が胃癌を発症するという報告がある一方で、ピロリ菌陽性者が除菌した場合、胃癌発生率が1/3に抑えられたという報告もあります。したがって、ピロリ菌の診断と除菌治療は胃癌発症抑制において重要であるということが分かります。

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